【世界で生きるチカラ】子どもの未来を見据えた外国語習得を‐坪谷ニュウエル郁子 | 東京インターナショナルスクール

2021.11.24

【世界で生きるチカラ】子どもの未来を見据えた外国語習得を‐坪谷ニュウエル郁子

Hello Everyone,

前回は日本の「学習指導要領」から、今、日本の子どもたちに求められている能力とそれを身につけるための学習方法を見ていきました。
>>学習指導要領の変遷と現代日本の子どもたちの学び<<

2020年からの新学習指導要領では、小学校では3年生から外国語活動が開始され、5年生・6年生は外国語(主として英語)が正式な教科、つまり成績がつく対象となりました。
これからの子どもたちには、外国語による発信能力がより強く求められるようになっています。

今回は、日本語を母語とする人たちが英語を身につけるまでにはどれだけの時間が必要なのか、それはどうしてなのかということを見ていきます。


坪谷ニュウエル郁子
学校法人 東京インターナショナルスクール 理事長
NPO東京インターナショナルプログレッシブスクール 理事長
株式会社 東京インターナショナルスクールグループ 代表取締役
文部科学省 国際政策特任フェロー、IB教育推進コンソーシアム関係者協議会 構成員
国際バカロレア機構 国際バカロレア日本大使     など

 

 

1.CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)とは

1993年にEU(欧州連合)が発足し、加盟国(28カ国)間で人の流動が顕著になりました。
EU圏内は様々な言語が存在している関係上、学習者がどのレベルまで他言語を習得しているかを判定するガイドラインが必要となりました。
そこで生まれたのがCommon European Framework of Reference for Languages(CEFR、 和訳:ヨーロッパ言語共通参照枠)です。
このCEFRは今世界中で活用されるようになりました。

評価基準は次のような特徴があります。

①全ての言語に共通して使用できる判断枠である。
②同じ判断枠で、同一人物の異なる言語能力を比較できる。
③知識の量ではなく、「何ができるのか」「どの程度うまくできるのか」で習得状況を把握する。
④指導者だけでなく、学習者自身で判断できる。

このCEFRは教育や就職の流動性の際にも目安とされています。
例えば、フランスでオランダ語話者が就職する際に、ある会社はフランス語は業務レベルのC、ドイツ語は日常会話レベルのBを採用の条件と出したりしています。
CEFRでは、習得レベルをA:基礎段階、B:自立段階、C:熟練段階に分けてあり、それぞれをさらに2段階して6段階に分けられています。


参照:
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠) | ブリティッシュ・カウンシル

 

2.日本語と英語は遠い言語なので習得に時間がかかる

さて外国語の習得は、習得する言語と母国語との親和性により習得までの平均時間が異なります。
米国の内務省(日本の外務省にあたる)で職員を他国に出向させる際、日常会話程度のレベル(CEFRのB1レベル)まで習得させるために速習で集中学習をします。

下記が英語話者がそれぞれの外国語の習得(日常会話レベル)までにかかった平均時間を簡単な表にまとめたものです。

実際のデータはもっと詳細なのですが、ここから読み解くと一番長い時間がかかった(平均2,760時間)のは、なんと日本語でした。
なぜなら英語と日本語は親和性が低く、非常に遠い言語だからです。
言語的に近いユーロ言語、またインド言語は比較的習得までが短時間であることもこのデータが示しています。

次に日本語話者が習得する比較的易しい言語と難しい言語の表が以下です。

日本では外国語の習得というと、ほとんどの人は英語の習得とイコールと思っているところがあると思います。
習得の難度を見ると英語の習得は日本語話者にとっては難しい外国語であり、そして例えば日常会話(CEFRのB1レベル)でも取得までに時間がかかるということがお分かりいただけるのではないか、と思います。

残念ながら、そこには魔法の粉はないのです。

 

3.英語をどのレベルまで習得したいかで学習計画を立てる

一般的に日本語話者が英語を日常会話(B1レベル)に到達させるまでには、平均して約3,000時間、英語で脳に刺激を受けていなければいけないと言われています。
教育(進学)や業務などで必要とされるC1レベルは5,000〜6,000時間はかかります。
1年365日、お正月も夏休みも1日も休みなく1日1時間の学習をしても、小学校1年生から始めて中学3年生の1学期の終わりまでかかるという計算になります。
教育や就職の指針である5,000〜6,000時間は、小学1年生から大学3年までかかるということになります。
実際には学校で小学校から高校までの間、1,000時間の英語の指導の時間がありますから、それを差し引いても、個々がかなりの時間の努力をしなければ習得はできないということになります。

それを聞くとがっかりなさるかもしれませんが、母語は生まれてから成人するまでに63,000時間、脳に刺激を受けていると言われます。
街に出れば看板があり、テレビやら歌やら家族、友達との会話やら、私たちは常に母語によって脳に刺激を受けているのです。
3,000時間はわずかにその21分の1であり、6,000時間は約10%ですので、当たり前と言ってしまえば当たり前です。
英語の習得はどのレベルまで習得したいか(進学、業務レベルか、日常会話レベルか)を各人、必要に応じて判断し習得すれば良いのですが、その習得を何歳までにするのかも一緒に考えて計画を立てなければいけません。

なぜなら、同じことの繰り返しになりますが、魔法の粉はないからです。

 

4.外国語で何をどのくらいできるようになりたいかを考える

次に私が日本大使を務めている国際バカロレアの大学準備コースの最終試験の、外国語としての英語の過去問をご紹介します。
コースは上級コースと標準コースに分かれており、ここでは理系に進む生徒たちが多く選択する標準コースについてのご紹介となります。

次に日本の大学の入学審査における外国語としての英語における、典型的な過去問を見てみましょう。

このふたつを比べてみると大きな違いが読み取れるのではないか、と思います。
外国語といえども、知識のみならず論理的な思考能力、表現能力などが要求されていることがお分かりいただけるのではないでしょうか?

 

5.子どもの将来を見据えた外国語習得計画のすすめ

私自身は外国語の習得を目指すのか目指さないのか、どの外国語を習得するのか、それは日常会話のレベルか、教育、業務レベルかは各人が決めれば良いと思います。
しかし教育、業務レベルを目指すのであれば子どもの頃から計画を立ててコミットメントをしなければ高等教育の進学や就労には間に合わない、日本語とは親和性の遠い言語もあるという事実から目を背けてはいけないのが現実です。
逆に例えば退職した後に、日常会話程度を習得するという目標を設定することも一つの在り方でもあるとも思います。

幼少期の子どもは、自分で自分の将来を見据えた学習方針を考えるのは難しいです。
保護者の皆さんは子どもたちの未来を、可能性を広げる選択を常に迫られていることと思います。
世の中は国際化が進み、暮らす場所や働く場所の選択肢に「世界」を考える機会が増えてきています。
子どもたちが、このグローバル時代に必要とされる人材へと成長できるような選択を意識していきたいものです。