【世界で生きるチカラ】学習指導要領の変遷と現代日本の子どもたちの学び ‐ 坪谷ニュウエル郁子 | 東京インターナショナルスクール

2021.10.13

【世界で生きるチカラ】学習指導要領の変遷と現代日本の子どもたちの学び ‐ 坪谷ニュウエル郁子

Hello Everyone,

前回は世界で進む教育改革の中で、どういった教育の方向性が求められているのかということについて、経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA)のサンプル問題から読み解いてお伝えしました。
>>今、日本のみならず世界は大きな教育改革の真っ只中にいる<<

今回は日本の「学習指導要領」から、今、日本の子どもたちに求められている能力とそれを身につけるための学習方法を見ていきます。


坪谷ニュウエル郁子
学校法人 東京インターナショナルスクール 理事長
NPO東京インターナショナルプログレッシブスクール 理事長
株式会社 東京インターナショナルスクールグループ 代表取締役
文部科学省 国際政策特任フェロー、IB教育推進コンソーシアム関係者協議会 構成員
国際バカロレア機構 国際バカロレア日本大使     など

 

 

 

1.学習指導要領から見る日本の教育方針の変遷

皆さんも「学習指導要領」という言葉をお聞きになったことがあると思います。
学習指導要領は、文部科学省が告示する初等、中等教育(小学校から高校まで)における教育課程の基準です。

例えば戦後初めての現代化カリキュラムと言われた学習指導要領は1957年(昭和32年)に人工衛星が打ち上げられたことによるスプートニクショックから「教育内容の現代化」が起こり1971年(昭和46年)には内容の多い濃密なカリキュラムが組まれました。
しかしその反面、授業が速すぎるため消化できないという問題点などが上がってきました。
教科書を最後まで終えることができないという問題です。

その反省から教科の学習内容を大きく削減し、生活科や道徳教育の充実などで心豊かな人間の育成を目標にした新学力観、いわゆる「ゆとり教育」(1980年、1992年)へのシフトがその後に始まりました。
振り子の針が逆に大きく動いたのです。
ただし、それでは基礎、基本が確実に身につきません。

それでも全人教育は継続したいと「総合的な学習の時間」により生きる力を育成する教育(2002年、平成14年)を推奨しつつ、ゆとりでも詰め込みでもなく、知識、道徳、体力のバランスのとれた力(脱ゆとり教育とも呼ばれる)の育成(2011年、平成23年)へという変換を経てきました。

そしてついに、21世紀という変化の激しい時代を生き抜くために、2020年(令和2年)に戦後9度目の改訂の学習指導要領が今まさに始まったところになるのです。
柱は「主体的、対話的で深い学び(アクティブラーニング)」の導入やプログラミング教育の充実が図られる内容です。

 

 

2.2020年 子どもたちの「生きる力」を育む学習指導要領スタート

小学校では2020年(令和2年)度、中学校では2021年度(令和3年)、高校においては2022年(令和4年)度の第一学年から学年進行で新しい学習指導要領が実施されます。

教科としては小学校では3年生から外国語活動が開始され、5年生・6年生は外国語(主として英語)が正式な教科、つまり成績がつく対象となりました。

高校では持続可能な社会づくりを目指し、地理的な諸課題を考察する「地理総合」、自立した主体として国家、社会の形成に参画する力の育成を目的とした「公共」、外国語による発信能力を高めるため「英語コミュニケーションI」、そして数学では「統計」のそれぞれの科目が必修化されます。

こうして文部科学省が従来の「受動的な授業 学習」から「積極的、能動的な授業 学習」の学習方法「アクティブラーニング」に移行した背景は、知識、情報、技術の変化のスピードが急速に上がり続けている時代に適応するために新たな能力が必要となったからです。
これは前回の記事(※前回記事へリンク)でお伝えしたOECDが提示した「21世紀に求められる能力」と同じ方向性と言えます。

 

 

3.2020年新学習指導要領に見る、子どもたちが求められる能力と学習方法

今訪れている技術の革新に伴い急速に変化する社会、人もお金も情報も瞬時に世界中を駆け巡る時代、そして今まで経験しなかったようなことが地球規模で起こる時代に我々は急速に適応しなくてはならなくなりました。
そのためには、主体的に判断をする力を身につけなければならなくなったのです。
また人々の価値観はますます多様化していく中、違いを認め合う社会へと変化しなくてはいけない必要性も生じました。
そのため、その場の状況や相手の価値観を理解しながら自分の考えをまとめて自らが発信する力、さらにはその上で今までには例のない答えのない課題、問題にも向き合い、価値観の違う他人とも協調しながらよりよい答えを導く問題を解決する能力が必要となったのです。

世界中で起こっている感染症のパンデミック然り、地球温暖化然り、持続する社会の創造然り、人口問題然り我々は今、多くの課題に向きあわなければなりません。
そんな時代の真只中に生きているのです。
日本も少子高齢化を迎え家族という小さな社会から世界という大きな社会まで、より平和に持続していくための課題は山積みであると言えます。

そういった時代背景を受けて、文部科学省が打ち出した新しい学習方法が「アクティブラーニング(主体的な学び、対話的な学び、深い学び)」です。

それでは「アクティブラーニング」とは何なのでしょうか?
主体的な、対話的な、深い学びとは何なのでしょうか?

 

 

4.主体的・対話的な深い学びを身につけるアクティブラーニング

一言で言うと認知的、論理的、社会的能力、教養、知識、経験を養いながら、自ら主体的に考え、行動する方法を身につけ、同時に異なる価値観にも耳を傾けて相手の考えを認めたり、尊重する姿勢を身につけたりすることです。
それらを身につけるための学習方法が「アクティブラーニング」です。

新学習指導要領では3つの柱が示されています。
3つの柱とは「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」です。

「主体的な学び」とは、学ぶことに興味、関心を持ち自分の進む道と学習との関連性を意識して学ぶことです。
「対話的な学び」とは自分の考え方に囚われるのではなく、様々な立場の人々との対話を通じて自分の考えを広げて深めていくこと。
「深い学び」とは、学びの過程で、それぞれの特性、特質に合わせた見方や考え方を踏まえながら、様々な別の知識と関連づけることで、学びをさらに深くしていくことです。

今回の学習指導要領では、これらを実現するアクティブラーニングという学習方法へと変わっていくのです。

こういった動きは日本だけではありません。
世界中の様々な国で同時にこの大きな教育改革が始まっています。
それを日本で本格的に始めていくのが今回の新学習指導要領なのです。

 

参考文献:
新学習指導要領・生きる力 – 文部科学省
学習指導要領データベース(過去の学習指導要領、昭和22年以降) – 文部科学省 国立教育政策研究所