【世界で生きるチカラ】今、日本のみならず世界は大きな教育改革の真っ只中にいる ‐ 坪谷ニュウエル郁子 - 東京インターナショナルスクール キンダーガーテン/アフタースクール

2021.09.01

【世界で生きるチカラ】今、日本のみならず世界は大きな教育改革の真っ只中にいる ‐ 坪谷ニュウエル郁子

Hello Everyone,

今後、不定期更新ですがこちらのブログに、東京インターナショナルスクール キンダーガーテン/アフタースクール代表の坪谷ニュウエル郁子のコラムを掲載していきます。
初回の今回は世界で進む教育改革の中で、どういった教育の方向性が求められているのかということについての内容です。

今、世界の子どもたちはどういった能力を求められているのでしょうか。
経済協力開発機構(OECD)が加盟国の多くで15歳の子どもを対象に実施する学習到達度調査(PISA)のサンプル問題から見ていきます。
また、求められる能力がそうして明確に示されることの影響についても触れていきます。

 


東京インターナショナルスクール キンダーガーテン/アフタースクール代表
坪谷ニュウエル郁子

 

 

1.学習到達度調査(PISA)とは

経済協力開発機構(OECD)では、加盟国の多くで義務教育終了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学の知識、科学の知識、問題解決能力などを調査する「学習到達度調査 Programme for International Student Assessment(PISA)」を3年毎に実施しています。
結果分析には通常1年ほどの時間が必要なので、報告されている最近のものは、2018年度の79カ国、地域、そしてランダムに選出された約60万人の生徒を対象にした調査です。

テスト問題のサンプルはOECDのサイトから入手できるので興味があればぜひチェックしてください。
今、世界ではどんな能力を求めているのかがそこから読み取ることができます。

※画像引用元:Take the Test – sample Questions from OECD’s PISA Assessments(リンクは下記)

 

2.PISAのサンプルテスト問題に見る、求められる能力の例

こちらのサンプルテストを見てみます。

>> Take the Test – sample Questions from OECD’s PISA Assessments<<
※画像引用元:上記リンク先 Take the Test 21/322ページ目

例えばサンプルテストの読解力の第2問の「インフルエンザ」の2の2は、文章を読ませてその文章が読者にとって読みやすい記事であるかどうかを訊ねる形式の問題となっていて、答えはなく理由づけが良ければ正解になります。
「挿絵が漫画のようで可愛い」ので読みやすいという答えや「挿絵の注射器が怖いので読みにくい」という答えも模範解答の例の一つとなっています。
つまり正解がない問いに対して、自分の意見を述べるのですが、その上でその意見の正当性が吟味されるのです。

今年度(2021年)は正にPISAが実施される年ですが、そのサンプル問題が公開されているので、そのうちの数学の問題の一部を見てみましょう。

>> PISA 2021 MATHEMATICS FRAMEWORK (DRAFT)<<
※画像引用元:上記リンク先 PISA 2021 MATHEMATICS FRAMEWORK 49ページ目

アジア各国の人口とスマートフォンの利用者のデータが与えられており、利用率、人口と利用率、最低賃金と利用率の関係を示す散布図のデータがあり、解答に必要な分析もコンピューター上で操作可能で、操作した上で解答をする仕組みです。
データを読み取る力、分析力、および情報機器を扱う能力が期待されていることがこの設問からわかります。

※画像引用元:上記リンク先 PISA 2021 MATHEMATICS FRAMEWORK 73ページ目

「条件付き意思決定」に関する問題としては、オンラインショップでイヤホンの購入を検討する場面において、商品レビューの結果から購入者が懸念している配達にかかわる問題が発生する可能性を推定する問題が提示されています。
星の数ごとの度数とその結果を付けた理由の集計結果が示され、クロス集計をして推論する問題です。
ここでは統計能力、そこから導き出される結果に対しての推論力と意思決定能力が問われています。
これらのサンプル問題から見えてくるのは、デジタル社会の到来、身近な問題のみならず、国境を超えた課題を解決しなければいけない必要性(温暖化、環境、平和、資源、貧困、少子高齢化、人権、人口問題など)、専門家でさえそれらの答えを持っていない社会を迎えて、OECDがどんなスキルを子供達に身に着けさせたいと思っているのかが、はっきりとわかると言えます。

 

3.育成すべき能力とそれが示されたことによる影響

OECDの提唱する能力の枠組みの基本は以下の3つです。
1)社会、文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力
2)多様な社会グループにおける人間関係形成能力
3)自律的に行動する能力

ここで示したサンプル問題にもこれらの能力を測る問題であることが示されています。

また、国際団体の「ACT21]が提唱するスキルとしては以下の4つをあげています。
1)考える力
 ・創造力、イノベーション力
 ・批判的思考、問題解決能力、意思決定力
 ・学び方を学ぶ、内省から発展
2)働き方
 ・コミュニケーション能力、チームワーク
3)仕事のツールとして情報、情報通信技術を使う能力
4)世界の中で生きる方法として、地域と国際社会の両方に生きているという意識の形成、自分の人生とそれに則したキャリアとの位置付け、個人としてまた社会の一員として、課せられた責任への認識

つまりこうした育成すべき能力がそれらの団体によってはっきりと定義化されたことにより、世界的な潮流としてそれが必要な教育のあり方に大きな影響を与えられました。
それによっていま、世界は、日本は、大きな教育改革の真っ只中にいるのです。

例えば英国のキースキル、アメリカの21世紀型スキル、オーストラリアの汎用的能力、フィンランドのコンピテンシー育成、ドイツの成果管理システム構築など、各国は育成すべき能力を明確に打ち出しそれらの展開を実施しています。

 

次回は、日本における具体的な対応についてお伝えしたいと思います。
教育改革を推進する動きは日本ももちろん例外ではなく、2020年度からは小学校、2021年度は中学、2022年度から高校と学習指導要領も新しくなり、「生きる力」を提示しています。
大学の入学審査もこの傾向を受け、2021年度の入試から設問のあり方が変わってきています。
それらについて詳しくお伝えする予定です。

 

参考文献:
文部科学省(2019),OECD 生徒の学習到達度調査
( PISA ) Programme for International Student Assessment 〜 2018 年調査国際結果の要約〜, 令和 元(2019)年 12 月,国立教育政策研究所.
OECD(2018), PISA2021 MATHEMATICS FRAMEWORK (DRAFT),November 2018.
Moore, D. (1997), “New Pedagogy and New Content: The Case of Statistics”, International Statistical Review, Vol. 65/2, pp. 123-165.