Hello Everyone,
今回は、学校法人 東京インターナショナルスクール Daniel Reynolds校長(通称Dan校長)へのインタビューをご紹介します。
学校法人 東京インターナショナルスクールは、男女共学のインターナショナルスクールとして1994年に設立され、2017年には東京都から学校法人の認可を得て、各種学校としてスタートを切りました。
外国籍を持つ生徒を主な対象とした学校で、日本の学校教育法の第一条に掲げられる教育施設(いわゆる一条校)とは異なり、独自の方針により運営されています。
ここで行われる教育内容は、国際バカロレアのフレームワークに基づいた探究型のもので、問題解決能力やコミュニケーション能力、自己管理能力、社会性などのスキルを養い、国際的な視野を持った人(国際バカロレアの学習者像)の育成を図っています。
一方の私ども「東京インターナショナルスクール キンダーガーテン/アフタースクール」は日本の子どもたちを対象にしており、日本人としてのアイデンティティの上に英語力やグローバル・スキルを身に付けていくスクールです。
そして私どものスクールは、学校法人 東京インターナショナルスクールの知見を継いだ独自の探究型英語プログラムをレッスンに取り入れています。
Dan校長には、東京インターナショナルスクール(以下、TIS)の教育の特徴を取材しました。
Dan校長はカナダ生まれ、日本人の奥様と大学生の息子さんを持つ、元体育の先生です。
日本が大好きで、主に日本でインターナショナルスクールの教師としてのキャリアを重ねてきました。
来日してもうすぐ22年!
大の日本通で、なかでも好きなものは「居酒屋」だそう。
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目次
1. 東京インターナショナルスクールの教育の特徴
ー TISの教育の特徴を教えてください。
TISは、世界中60カ国以上から生徒が集まるインターナショナルスクールです。
保護者の仕事の関係で日本に滞在する、駐在のご家庭がほとんどを占めます。
ですから、特定の国家や宗教に拠った教育はできません。
そこで、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)を採用し、教育のメイン・カリキュラムに据えています。
国際バカロレアは、その名の通り、「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的」とするプログラムです。
そういった意味で、いろいろな国籍の子ども達が集まる我々のようなインターナショナルスクールにはぴったりのプログラムです。
ー そんなにもたくさんの国籍の生徒が集まっていると、確かにどれか一つの国や宗教に依ることは難しいですね。
その通りです。
60カ国以上の生徒の国すべてを均等に扱うのは不可能です。
ですから、自分の国の言葉や歴史、文化は基本的には家庭でしっかりとサポートしていただくことになります。
当校では、各ご家庭に対し、共通言語としての英語だけではなく、各ご家庭に母語の学習の重要性を伝えています。
私は長年インターナショナルスクールの教師をやってきましたが、TISの生徒たちほど、相手との違いをそのまま受け入れられる子どもたちはいません。
皆がそれぞれ違うので、ここでは「普通」というものがありません。
違うのが当たり前なのです。
そうした環境の中で、集団で生活することにより、生徒たちは自ずと相手を尊重することを学んでいきます。
2.小学校のカリキュラム
ー TISの小学校カリキュラムについて教えてください。
まずは国際バカロレアの「探究」の時間です。
これは「Unit of Inquiry」と呼ばれ、全体の1/3ほどを占めます。
TISの核の授業です。
それ以外の2/3は、数学、Literacy(読み書き、日本語でいう国語の時間に当たる)、体育、芸術、音楽などになります。
ー 国際バカロレアだけをやるのではないのですね?
そうです。
国際バカロレアはカリキュラムのフレームであって、内容は各学校で決める必要があります。
TISではリサーチの結果、当校に最もふさわしいと考えるカリキュラムを提供しています。
例えばLiteracyでは、米国コロンビア大学教育学大学院Readers & Writers Projectのプログラムを使っています。
また体育はオーストラリアのカリキュラムです。
ただし、それぞれをバラバラに行うのではなく、学校全体として同じコンセプトや目的を共有して行っています。
これはとても大切な点です。
なぜなら、すべての学びが連動していくことで、より深い理解へとつながり、より深い理解は一生使える知恵へと発展するからです。
3.国際バカロレアと探究の時間
ー 国際バカロレアの「探究」の時間をもう少し詳しく教えてもらえますか?
探究の時間では、国際バカロレアによって決められた6つのテーマがあります。
私たちは誰なのか
私たちはどのような場所と時代にいるのか
私たちはどのように自分を表現するのか
世界はどのような仕組みになっているのか
私たちは自分たちをどう組織しているのか
この地球を共有するということ
国際バカロレアが指定するのは、この枠組のみ。中身は学校側で考えます。
また、コーディネーターと呼ばれるカリキュラムの統括を行う役職が配置されています。
このテーマに沿って、カリキュラムコーディネーターと各学年の教師たちがユニットと呼ばれる学習内容を定義し、またユニットの内容や実際の授業計画(レッスンプラン)を行います。
決められた教科書をただ進める、というような授業ではないので、しっかりとカリキュラムコーディネーターという役割を置き管理していく必要があるのです。
ユニットの内容は、学年が低いほどシンプルで、学年が上がるにつれ、複雑で深くなっていきます。
ここから、幼稚園のクラスと小学4年生のクラスを例に見てみましょう。
4.探究の時間の取り組み例
例① 幼稚園K1(4〜5歳)クラス
テーマ:私たちは自分たちをどう組織しているのか
ユニット:人が作ったシステム
セントラルアイディア:人は目的に合わせて様々な交通手段を使っている
<授業の例>
徒歩、電車、モノレール、ボート、バスの5つの交通手段を使って、実際にお台場まで行ってみる。
戻ってきたら、それぞれの交通機関について、絵に描いたり、感想を話す。
また、公共交通機関を利用する時の安全やマナーについて皆で学ぶ。
<ポイント>
幼稚園児は、まずは体験させることが重要です。
その後、たくさんのゲームやアクティビティを取り入れます。
また絵を描いたり、クラフトを作ったり、様々な楽しい手段で自己表現をさせます。
例② 小学校4年生クラス
ユニット:探検、探査
セントラルアイディア:探検、探査は新たな発見に結びつき、発見は新たな理解へと発展する
<授業の例>
今までどんな探検がなされ、どんな発見へと発展したのか、調査し、実際に紙に書いて例を挙げてみる。
その発見を、技術的、地理的、社会的、科学的な発見の4つのカテゴリーに分類してみる。
また、発見の重要度をランク付けし、どの発見が人類にとって偉大であったのか検証してみる。
それらの発見が人間の物の見方をどのように変えたのか考えてみる。
最後のプロジェクトとして、生徒は一人一人、歴史上の大きな探検/発見をした人物を演じながら、その発見の過程や結果について発表し、プレゼンテーションをする。
<ポイント>
地理的な発見だけではなく、社会的な発見(例:民主主義、同性婚等)にも留意する。
一つの視点に偏らない様に注意する(例えばコロンブスはヨーロッパからのみの視点)。
最後のプロジェクトでは、どのように学んだことをプレゼンテーションし、人に伝えるか、という点でとても大切。しっかりと時間を使い、仕上げる。
ー 幼稚園の年齢から自分のプロジェクトに取り組むというのは面白いですね!常にこうして自ら課題設定を行い、調べて分析し、意見をまとめていくことを繰り返していけば大きな力がつくということがよくわかります。
私の息子もずっと国際バカロレアの学校に行っていました。
大学に入学した時に、「大学の授業は国際バカロレアで学ぶような内容で、今までやってきたことの延長だから全然難しくはない」と言っていました。
一方で、暗記型の学習をずっとやってきた学生は大学に入ると、今までのやり方と根本的に異なるために大変苦労するようです。
小さい時から自ら課題を設定し、自分で調べ、論理的に分析し、自らの意見をまとめて発表することを繰り返すことで、物事に対する分析力、理解力、洞察力、そしてその背後に隠れている意味や価値を見出す力、こうした力は生徒たちの一生使える大きな財産となります。
5.生徒の取り組みの評価方法
ー TISでは、生徒の評価はどのように行うのでしょうか?
小学生(PYP)では、「良い/悪い」という評価というよりは、生徒の特性や得意分野のプロファイル分析が中心となります。
得意/不得意を把握し、どこをどう伸ばしていくのか、ということを考えるための材料とします。
中学生(MYP)になると、評価もしっかり付けていきます。
こちらの数学の評価表のサンプルを見てください。
以下の4つの評価基準が設定されています。
A:知識と理解
B:パターンの分析
C:コミュニケーション
D:実生活における数学の適用
大変面白いのは、これは例えば数学であっても、「問題を解いて正解する」だけでは足りない、ということです。
それだけに留まらず、「数学の隠れたパターンを理解し」、「それを正しく他者に説明することができ」、さらに「実生活にそれを応用」できることを求めています。
「ただの知識ではなく、学びを人生を豊かにするためにいかに昇華させるのか」ということを重視しています。
6.他の学校との違い
ー その他、TISが他の学校と大きく違う点はどこでしょうか?
TISは、適度なカジュアル感を大切にしています。
私はTIS以外では、いつも「Mr. Reynolds」と呼ばれるのが当たり前でした。
しかし、この学校では皆ファーストネームで呼び合うのが基本です。
だから、子どもたちも私をみると、「Hi Dan!」と挨拶してくれます。
生徒たちとの距離感がとても近く、とても楽しい気持ちになります。
また、冒頭でも話しましたが、60ヵ国以上の出身国の生徒が通う学校は稀だと思います。
TISは文化が異なることを受け入れ、共存していくのが当たり前の場所です。
また、Literacy(読み書き)のプログラムも大変良いものと自負しています。
生徒たちは読み書きに関してめきめきと力をつけています。
2013年に米国コロンビア大学教育学大学院Readers & Writers Projectのモデル校となり、毎年このプログラムのインストラクターが研修に来て、先生や生徒たちと一週間ほどの研修を行っています。
このプログラムを使うことを認められているのは米国外では世界に5校しかありません。
このプログラムを経験できる、というのが理由で応募してくる教員がいるほどです。
2年前には初めて日本でこのプログラムのワークショップを開催しました。
大変名誉ある経験でした。
7.Dan校長からのメッセージ
ー とても興味深いお話しを聞けました。ありがとうございます。
インターナショナルスクールは、とても特殊な環境です。
親御さんの仕事の都合で海外に住まざるを得ない多国籍の生徒たちが集まって学ぶ学校です。
だから、本当に多様な価値観がここにはあります。
まとめるのは大変ですが、そんな多様性が集まってはじめて見えてくる「人類共通の大事なこと」が見えること、それがインターナショナルスクールの魅力です。
国際バカロレアはまさにそうした部分を見つけだすためのプログラム。
例年では桜の季節にはお祭りも開催しています。
皆さんもCOVID-19が収まったらぜひ遊びにきてくださいね!